作品名
制作開始日
(無題)表示2020-05-09雄鳩は喉を膨らまし
雌鳩を追いかけ回し
くるくる踊る
やがてもう一羽加わる
三羽の鳩は一直線に並び
僕のギターと目が合う
こぼれるギターの音ゆらゆらと
しばらく時間が流れる、
疫病の或る日の午前
貝の欠片表示2019-10-11貝の欠片を拾って歩く
僕はひとり長い海岸で
手からこぼれた貝殻も
ひとつひとつ探して集めて
真珠色の砂さえ愛おしくて
ひとつも先へは進まない
ふと潮風が背中を撫ぜて
涙が砂を更に光らせている
時間はもう気にしなくていい
他にすることなんてないんだから
袋が破れているのは幸いだった
いつまでもこうして歩いていられる
僕は長い海岸で
貝の欠片を拾って歩く
小さな希望表示2019-08-14揺れるバスの窓から見える
地元の小さなカラオケ店の
ガラス窓に閉じ込められて外を見る女の人は
琥珀の中の小さい虫みたい
ゼリーの中のさくらんぼみたい
グレーな雲が世界を覆おうとする
赤い溶岩で手を彩った絵
小さなぼくの夢は飴玉みたい
ザラメのついたゼリーみたい
トゲトゲ表示2019-08-13ぼくは、あなたのようなやわらかな優しさで動いていないの。
ひとみちゃんと同じように、トゲトゲとした怒りで生きているの。
この世が味方になるまでは、ずっと。
別れ表示2019-01-25きっとこれは
僕だけが別れだと思っているような
曖昧な別れ
明日からも連絡をし合うだろう
誰にも知られない、君にも
僕がいないこと
君がいないこと
いつのまにか冬は更け
優しい朝日が降りていた
フードかぶった子を抱く母親
見慣れた季節だった
寂しさというのは
失った時に抱くもの
いつもどおりの
穏やかに晴れた朝の空気に
さようなら、という言葉は
音にもならずに吸い込まれた
目覚め表示2019-01-13名前を呼ばれた
初めて聞く声だった
遠く知らない国だった
美しい世界の歌だった
その真新しい夜明けに
ぼくは目を覚ました
ぼくの中にぼくはいなかった
その美しい世界でぼくが見えるらしい
暗くて
自分の姿も知らなかったのに
いま細長い朝日が地面を照らし
ぼくの足元に触れている
或る発見表示2017-05-03家族が散歩に出掛けた後
窓際の植木鉢の土の上に
羽が落ちているのを見つけた。
窓からは光が
僕と鉢台だけに
僕にとってはあまりにも眩しく注いでいた。
その羽を唇に咥えてみた。
生きているインコの感触はしなくて
しめった、冷たい、かなしい味だった。
だから持ち帰らずに、土の上に戻した。
世紀末表示2015-04-06世紀末のような空
でも世界は終わらないことを知っている
その安定さが
ぎゃくに僕を不安にさせる
(---どこかで爆弾が落ちたり---)、憎しみ合ったりして
地球の肌をくすぐってる
でも誰もいなくなった後も
紫色の空の地球はそ知らぬ顔で回り続けるでしょう
僕の涙が地面に落ちて
海と同じようにこの星を潤しますように
小さな僕の中の大きな海が
地球の青さのひとつになって青をより青くしますように...
ムーンウォーク表示2013-07-13オカメインコのクーピー。
久し振りに実家に帰ったところで、
君はもういないんだ。
窓際に鳥かごのないのに気が付く瞬間が、
僕の中で巻き戻されてはリピートされている
――リズミカルに。
僕は端然と後ろ向きに歩き出す、
華麗なムーンウォークのように
――鮮やかに。
走って表示2013-07-06走って
走って
風をきって
走って
ビルや
家の間を
通り抜ける
流れる風で
涙を
吹き飛ばせ
最速の
青年
走れ
漕いで
漕いで
どこまでも
漕いで
何をしてるのか
忘れるまで
懐かしい
匂いたちは
心に
染み込んで
栄養になる
メガネ表示2013-06-17ひとりのメガネが
ふらふらと 夜の学校にやってきた
どうやって来たかは 知らない
メガネは軽いのだから
フレームに 羽が生えて
飛んできたのかも
ひとつのメガネが
宙を漂っていた
階段の窓辺で会釈をする
光る蝶々の4つの羽
メガネに記憶力はないが
夜の空気が気持ちがいいのは知っていた
知らない体表示2013-02-05知らない体で
知らない踵の上
知らない間に
どこかしら傷めてきたか知らない
知らない年の
知らない朝に
覚えていない光を顔に浴びて
ベッドで目覚めたのを覚えていない
聞き覚えのない名前に
身に覚えのない思い出
実感のない学歴
何をしているのかも知らない
人間表示2012-11-27大空の中、羽ばたく鳥たちは
鳥に生まれてよかったと
一度でも思ったことはあるだろうか
なにも考えていないのだろうか
あの小さな頭に、大きすぎる世界
なにも考えずに
ただ自由に飛べれば幸せなものだ
僕は人間としてどうして生きていけばいいのかが分からない
飛び出さなきゃいけないのに世界のほんの一部も知らない
両親は家庭を持ちお金を稼ぐことが幸せだと言っていました
あなたがしている生きることの方法を
その小さな頭で考えていることを教えてください
波表示2012-08-18今日海の岩場で遊ぼうと思って行った。
でも潮が満ちてて岩の部分は少なかった。
大きい波が来たら岩に打ちつけられて怪物の顔みたいな岩肌に飲み込まれる気がした。
恐かった。
沖のほうに行っては戻ってくるのが、
何億年も前から止まらずに起こっているのだと思うと、なんかすごくすごかった。
量子力学もひも理論もみんな波の話だ。
この世界が全部目の前の波で出来てると思うと、なんかすごくすごくすごかった。
石を拾って投げたら、音もしないで小さな水しぶきが上がって、
何もなかったように次の波が来て沖に戻った。
(無題)表示2012-03-17ひとつの島にむかって
知らない人たちの心が揺れる
船は揺れる